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CASE STUDY

外資系エンターテイメント

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キャラクターの個性から価値を引き出すプロモーション

BACKGROUND STORY

当時デジタルマーケティングを中心に推進していた外資系エンターテイメント企業の直営ブランドストア。SPA(special store retailer)という形態で、オリジナルストーリーに基づく新キャラクターを自社で開発、そのグッズについてのプロモーションを企画していました。その周年記念にあたる限定ぬいぐるみ(プラッシュ)発売に向け、顧客の関心や行動から発想し、そのキャラクターが持ったアイデンティティや物語性を最大限生かしたプロモーションを検討すること。それが今回の企画のゴールでした。

顧客の声が導く。「所有」ではないぬいぐるみの価値は?

そのぬいぐるみには、それぞれ誕生ストーリーが描かれていました。物語に登場するキャラクターたちが自分に似たぬいぐるみをつくり、それぞれスウィーツのような名前をつけるというものです。

当初それらのぬいぐるみのプロモーションは、他の商品と同様、「購買検討時に購入を促進するため」の特典をつけるような販売促進の手法を用いていました。

ただSNS上の顧客の声や動きを見てみると、話題の中心は「購入や所有」、また「特典」を手に入れたことではなく、「次は誰がつくったぬいぐるみが出てくるのか?」や「どんな名前がついているのか?」といった物語にまつわる背景や展開を予想し合い、顧客同士がコミュケーションを取って楽しむ様子が見てとれたのです。

これは今までとも違うプロモーションが必要になると気付かされた瞬間でした。

「商品購入」の前に価値創造のアンカーを打ち直す

次のぬいぐるみのモチーフキャラクターはシリーズ発売2周年となり、みなの予想を超えるような意外なキャラクターに決まっていました。

これに合わせ、デジタルマーケティング上のプロモーションコンセプトも通常の販促のような「商品購入時」に照準を合わせるのではなく、顧客のコミュニティやコミュニケーションが盛り上がり、「商品購入前」の時間から楽しめるようなものにしようと決めました。

そうすることで、発売前の認知や関心が増すだけでなく、「顧客の体験価値」は購買前の期間にまで拡大され、総合的により付加価値の高い商品に変えていけると考えたためです。通常は、消費行動のプロセスで「購買時」に置かれる価値のアンカーを、「購買前」に打ち直す、そのような作業でした。

モノの本質的価値を引き出し、コトに昇華する

最も価値を引き出す軸は「キャラクターの持つ曖昧さ」という個性です。「予想できない、つかみどころがない」という価値を最大限生かし、顧客が予想や謎解きのように楽しめるよう専用プロモーションサイトをつくっていきました。

そのキャラクター自体が持っているアイデンティティがとても謎めいており、不思議な印象を与えるものであったため、あえて何も説明せず、目的も告げることなく、サイト上で謎のカウントダウンが始まるという手法を取りました。

SNS上では「何のカウントダウンだ?」といった反応が現れ、様々な声が上がり始めました。

カウントダウンは、2周年記念のぬいぐるみが登場することをお知らせすることに向かっていましたが、カウントダウン完了後も、関心事の中心である「誰のぬいぐるみ」ということはまだ明らかにならず、真っ暗な画面に「新しいぬいぐるみが登場する」ことだけを掲載する設計でした。

これは物語の中に出てくるキャラクターの行動をモチーフにしていました。突然現れたり姿を消したり、暗闇に目と口だけが浮かび上がったり、不思議なコメントを残したり、とにかくつかみ所がなく謎めいた印象を残すキャラクターを、プロモーションサイトとして表現したらこのようになるのではないかと考え、落し込んでいったのです。

ファンがみんなで「予想し合って楽しむ」という体験価値

プロモーションサイトには想像が膨らみ、「予想を楽しめる」よう重要なヒントを埋め込みます。

キャラクターにちなんで真っ暗な画面には発売日という限られた情報しか記載されていませんが、一部がめくれ、ぬいぐるみの「ピンクの色」が少し見えるようなデザインとなっていました。

SNS上ではその「ピンクの色」を手がかりにキャラクター予想が始まっており、プリンセスか?あの物語のサブキャラクターではないか?など、多くのキャラクター予想がされていました。

体の一部の色が見える、重要なヒントでしたが、それだけでは曖昧さが残り、特定することは難しいものであったため、より活発に声が上がったのではないかと思います。

徐々に明らかになっていく情報に対し、「期待値だけを上げてがっかりさせてしまう」ことは最も避けたい状況でしたが、元のキャラクター選定もシリーズの流れから見て本当に意外なものであり、アイデンティティともマッチしていたため、キャラクター発表の際も意外性を持って受け止められました。

限定販売ということもあり、発売してすぐに売り切れとなってしまうような勢いのあるプロモーションとすることができた一例です。多くの費用を投下して販売促進をかけることとも異なる方法で、「モノを売る」ことから「世界観を広げコトに昇華する」ことにつながったケースになります。

このケースでの一番のポイントは、プロモーションがただの販促のみに留まることなく、「そのプロダクトの個性や魅力を拡張させるもの」であったことでしょう。「ヒト・モノ・コト」、その対象が何であったとしても、その対象が持っている真の価値や可能性を引き出し顧客により豊かに届け、つないでいくことに挑んでいきたいと思います。

麻生 陽平
davide marketing(ダヴィデ・マーケティング)株式会社
代表取締役社長・CEO

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