COLUMN
携帯アプリからみるフリクションレス市場へのシフト
常に手にしているパーソナル・メディアとなったスマートフォンの普及により、
フィジカルな生活の中に、より自然にデジタルの価値が生かされ、マーケティング4.0で言われるようなシームレスな社会が体現されつつあります。
今回はアメリカで利用者が多く、生活に密着しているアプリについて、米国で広告ディレクターとして活躍するSonoda氏よりレポートいただきます。
1.個人間で手数料なしで送金できる「Venmo」
Venmoは個人間で手数料無しで送金ができるアプリです。
銀行口座、クレジットカード情報と結びつけることで、アプリ上で送信者(電話帳検索 or ID検索)に、金額を入力するだけで送金することができます。
また、請求機能もついているので、受信側から送金のお願いをすることもできます。
銀行口座への入金(ダイレクトデポジット)は、1〜3営業日が必要になりますが、手数料は完全無料です。
また、1%の手数料を支払えば、Fast Transferにてその日中に送金することもできます。
隠れたコストが発生せず、携帯ひとつで気軽に送金ができるので、アメリカではダウンロードしていない人はいないと言っても良い必須アプリに定着しました。
また、最近では個人商店などでクレジットカード支払いの代わりにVenmoもを使う店も増え、簡単な買い物もできるようになっています。
2.自転車と電動スクーターのシェアアプリ「Lime」
Limeは、自転車と電動スクーターのシェアアプリです。
都市群では車を持たないライフスタイルを送る人も増加しており、
街中に置かれたホットスポット(自転車とスクーターの設置場所)から自由にレンタルすることができる新たなシェアライドの形が注目されています。
乗った距離と時間によって自動引き落としがされるので、普段徒歩で生活している人が、少しだけ長距離移動したい時や、交通渋滞を避けて通勤通学したい人などに利用されています。
ホットスポット自体は都市群(ロサンゼルスであればダウンタウン中心)に限られているため、社会全体に浸透しているかと問われればまだまだ定着度は低いですが、
自家用車もシェアライド化するであろうと言われているこれからの時代を先駆けるサービスを展開しています。
・Lime
類似サービスとして、BirdやSkip、またUberが展開するJumpなども存在します。
3.小さな金額から資産運用ができる「Acorns」
Acornsは小さな金額から資産運用ができるアプリです。
クレジットカードやデビットカードで買い物をした際に出る差額(数セント)を自動的に投資に回してくれるシステムで、
例えば10.86ドルの買い物をした場合、11ドルまでの差額(14セント)をAIが世界中の企業に投資してくれます。
Acornsが生まれた経緯は開発者の「若者に資産運用の楽しさと重要さを認識してほしい」という思いからで、
現在の投資額を続ければ何年後にどれだけの資産に成長しているかなど、資産運用グラフもわかりやすく表示してくれます。
そもそも、アメリカでは、数セントのお釣りであれば受け取らないという人も一定数存在するため、小銭に対する意識が低いのが特徴です。
そのような人たちが、小さな金額から手間なく投資できるということで、若者を中心に利用されているアプリになります。
4.車社会で欠かせない「GasBuddy」
GasBuddyは車社会のアメリカで欠かせないアプリです。
アメリカでは地域によってガソリンスタンドの値段が大きく異なります。
例えば、私の住んでいる地域とロサンゼルスの中心を比較した場合、1ガロンあたり30セントほどの開きがあります。
初めて行く土地では、安いガソリンスタンドを探すのに苦労しますが、
GasBuddyを使えば、簡単にコストを比較することができるうえ、
支払い情報を登録しておくと1ガロンあたり最大25セントも節約できる機能もついています。
5.キャッシュレス・コンタクトフリーで給油できる「セブンイレブンアップ」
キャッシュレス・コンタクトフリーで給油できるアプリです。
ガソリンスタンド系のアプリでもうひとつご紹介したいのがセブンイレブンアップです。
アメリカではセブンイレブンもガソリンステーションを経営しており、このアプリを使えば、レジでの支払いはもちろん、ガスタンクのカード決済を通さずとも給油が可能です。
使い方は、アプリを開き、ガスタンク番号を入力するだけと、非常に簡単かつ接触を避けて給油できるため、COVID-19下にある現在の生活では非常に役立つ機能になっています。
また、このアプリを使って給油することでセブンイレブンのポイントも貯まり、ドリンクやその他商品と交換できるので節約にも繋がります。
6.フリーランス用クラウドソーシングアプリ「Fiverr」
Fiverrはアメリカのフリーランサーが利用するクラウドソーシングアプリです。
日本で言うクラウドワークス、ランサーズ等と同等の仕組みを展開しており、アメリカ経済を支えると言われているフリーランサーが自分のスキルやサービスを登録しています。
もともと、アメリカは企業から個人への発注に対する理解が深く、大企業であっても個人事業主への案件発注に抵抗感なく取引を行いますが、
このアプリの誕生によって、フリーランスの社会進出が大きく発展したと言えるでしょう。
広告ディレクター(米国在住)
Sonoda Kazuma
これらのようにスマートフォンアプリの傾向からも、生活の中に
・キャッシュレス
・コンタクトレス
・パーソナル
といった3つのトレンドを含んでいることが分かります。
2020年11月上旬に行われたeWMS(2020年ワールド・マーケティング・サミットは全てオンライン開催)では、
コトラー教授と共にマーケティング3.0、4.0の著者であるカルタジャヤ氏、セティアワン氏も講演し、
ポストコロナ以降のマーケティングの方向性について示しました。
2021年にはマーケティング5.0が書籍としてリリースされる予定とのことでしたが、
その中でも新たなテクノロジーを活用したマーケティングの進化が語られています。
デジタル化の中でより重要性を増す「Human」という側面と、それを補完し支援していく「Machine」が
それぞれの役割を担い、共生しながらより自然に流れていく、フリクションレス時代への挑戦がすでに始まっているのだと実感しています。