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小さな会社が一番になるためのポジショニング戦略とは?

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1.ポジショニングは誰が決めるもの?

伝統的なマーケティングのプロセスの中で「STP」という考え方があります。

現状を分析した後、「自分たちが誰に対しどんな価値を提供していくか」を決める、戦略の基点となるとても大切な工程と考えられています。

S:セグメンテーション
 顧客のニーズに基づいて、顧客をグループに分ける
T:ターゲティング
 自社の価値を届ける顧客グループを選ぶ
P:ポジショニング
 グループの中で自社をどう位置付けるかを決める

これらは全て自社が「主導的に決められる」という前提に立ち、見ている考え方になります。

たしかに「セグメンテーションとターゲティング」は、属性や地域、ニーズ等で分け、その中のグループを選ぶことができるので、「主導的に決められる」のだと思います。

ただ「ポジショニング」については、ここが良いと仮に位置付けを決めることはできても、本当の意味で決まるものではありません

・ポジショニングは顧客の、頭の中の話

Marketing is not a battle of products, It’s a battle of perceptions.
マーケティングとはプロダクトの戦いではなく、知覚の戦いである

上の一文は、「ポジショニング戦略」で有名なマーケティング戦略家アル・ライズ/ジャック・トラウト氏の著書(※1)から引用したものです。

マーケティングでは「顧客の頭の中で起こることこそ現実(に近いもの)」であり、そこの善し悪しに企業活動が大きく左右されると考えることがあります。

自分たちで「誠実です」といくら訴えていても、実際にサービスやプロダクト、価値を受け取る相手が「誠実だ」と感じていなければ、それは意味がありません。

あくまでも「相手の頭の中にどう位置づけられるか」が重要であり、最終的にポジションニングは「相手(顧客)が決める」のです。

2.一番手になることはベターであることに優る

ではどのように「相手の頭の中に位置付けられる」のでしょうか。

その手がかりとして、もう一つアル・ライズとジャック・トラウトの名著(※1)の中で取り上げられているメッセージを見ていきたいと思います。

It's better to be first than it is to be better.
一番手になることは、ベターであることに優る。

これは「一番手の法則」と言われるものです。

説明のために挙げられる有名な例として次のようなものがあります。

・世界で最初に北大西洋の単独飛行に成功したのはチャールズ・リンドバーグ。二番目に単独飛行に成功したのは?
・世界で最初に月面を歩いたのはニール・アームストロング。では、二番目に月面歩行した人は?

どちらも簡単に答えられないのではないかと思います。

北大西洋を二番目に単独横断したバート・ヒンクラーは、より少ない燃料で、より早く飛行することができたそうです。

ただ、強く記憶に刻まれているのは断然リンドバーグということになります。

ベターな品質で投入した二番手のものよりも、最初に知覚できたものの方が強いというポジショニングの基本的な考え方を示します。

3.すでに先行されてしまっているケースでは?

ただそうそう一番手の領域がたくさんあるとも思えません。すでに先に行かれてしまっているケースも多々あるでしょう。

そのようなときにはどうすべきなのでしょうか?
さらにアル・ライズとジャック・トラウトの知見を見ていきます。

If you can't be first in a category. set up a new category you can be first in.
あるカテゴリーで一番手になれない場合には、一番手になれる新しいカテゴリーを作れ

先ほどの北大西洋の単独横断で言えば、三番手であったはずのアメリア・エアハートが、「女性として初めて単独横断」に成功し、広く知られることになった例が取り上げられています。

これは同じカテゴリーで「どこがより優れいているか」という二番煎じであるよりも、

元のカテゴリーとは異なるカテゴリーをつくり、その中で「何が新しいか」という一番手であることの方が重要であることを示しています。

・新しいカテゴリーを創造する

これをデービット・アーカー教授は、著書「カテゴリー・イノベーション」の中で、少し異なった表現で表しています。

新しいカテゴリーあるいはサブカテゴリーを形成することが戦略的に魅力的なのは、その結果、先行者優位性を構築できる可能性があるためだ

これは同じカテゴリー内でよりそのブランドが選ばれるよう違いをつくる、ということではなく、既存のカテゴリーとは質が異なる、別次元の価値を生み出すことを指しています。

デスクトップやラップトップPCに対して、新たな価値領域を創造したiPhoneやiPad、タクシー業界のあり方を変える価値を生み出したUberなどもその一例でしょう。

・ポジショニングの持続性

また新たなカテゴリー創造における重要な点として、「ポジショニングの持続性」を挙げており、持続性を維持するための障壁をつくれるかがカギだとしています。

キリン一番搾りや発泡酒の製造法のような特許、アマゾンやGoogleのようなスケールメリット、

アップルやディズニーのような本家本元というイメージ、顧客ロイヤルティ等、持続性を長く保つための壁をつくることが大事であるという考え方です。

度々引用しているバイロン・シャープ氏も「革新と差別化がうまく機能すると市場に資産が形成される」ことを挙げ、先行した製品が模倣された後もその状態は続いていくと言っています。

4.小さな会社でもポジショニングをつくれる

独立系ファイナンシャルアドバイザー企業のGAIAは当時10数名程度の小さな組織でしたが、迷わずこれらのエッセンスを応用していきました。

考えたポジショニング戦略のポイントは次の3つです。

1.カテゴリーをどう考えるか
2.何で一番手になるか
3.持続性の壁をどうつくるか

・カテゴリーをどう考えるか?

まず最初に考えたのは「カテゴリーの捉え方」です。

GAIAはファイナンシャルプランナーという側面も持っていたのですが、「FP」というカテゴリーはプレイヤーが多く裾野が広いため、境目が曖昧でした。

境目が曖昧になると、グループが定まらず「その中で一番手」ということが明確に分かりづらくなるため、カテゴリーは新たに作られつつあった「IFA(Independent Financial Advisor)」が良いと考えました。

単独で新たなカテゴリーを創造するパワーはなくても、

他の仲間たちとこれから普及していく新たなカテゴリーを共につくっていくことはできると考えたためです。

・何で一番手になるか?

次に考えるのは「何で一番手になるか」です。

GAIAは事例にも挙げている通り、「顧客本位をカルチャーとして持っている」組織でした。

そこでビジネスモデルもいち早く「顧客本位と言える」ものにシフトしていくことが完成形に近づく一つの手段と考えていました。

そのためコミッションベースという顧客からの販売手数料収入で成り立つ会社ではなく、

フィーベースという預けていただいた資産の増減に応じて、顧客と共に連動しながら収入が増減する仕組みにいち早く踏み切っていきました。

顧客とGAIAがテーブルの同じ側に座り、共にゴールに向かっていくスタンスを先行して築いていったのです。

・持続性の壁をどうつくれるか

最後は「持続性の壁」です。

これは2つ目のビジネスモデルの転換が大きく関わっています。

フィーベースという仕組みは、当時ほとんどの金融リテール企業が収益の柱にしていた「販売手数料」を中心に据えずに企業活動を維持するモデルになります。

そのため、顧客本位に近くことは間違い無いのですが、同時に「自ら企業の利益を大幅に削る」方法でした。

GAIA自体も身を削り1〜2年の単位で赤字を出しながらのリスクある挑戦となり、そのため「他の企業もすぐにそこにいくことを躊躇する」モデルであったと言えます。

その非合理性こそが「最大の壁」を築いていたのでした。

5.マーケティングの要点を知ってこそ実務で生かせる

このように小さな会社であっても、「先頭を切れる分野を創造すること」にチャレンジし、

ポジショニングをつくるチャンスは十分あるのではないかと思います。

これらはマーケティングの視点からだけ見た側面になりますが、新旧問わず、「マーケティングの考え方の要点」を知ってこそ、それぞれの実務に合った形で、適切なサイズで応用することができるようになります。

サブスクリプションモデルの流行などでマーケティングのプロセスにも色々な考え方が出てきていますが、新しいものの表面的な部分だけに囚われるのではなく、その考え方の「何が新しいのか?」「なぜそのような新たな形になることが必要なのか?」

そういう点に目を向けその本質を理解することで、自身の現場で本当に必要なことを取捨選択できるようになるのではないかと思います。

※1:アル・ライズ/ジャック・トラウト 共著「売れるもマーケ当たるもマーケ マーケティング22の法則」

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