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B2Bブランディングはなぜ必要なのか?

ブランディングの大きな誤解の一つは、それがB2C(消費財)のためだけのものであり、B2B(産業財)においては不要だと考えられていることです。

一方、マイクロソフト、インテル、IBM、シスコシステムズ、SAPなど多くのB2Bブランドが世界のブランドランキングTOP20(Best Global Brands 2020)に入っています。

多くの企業がB2Bにおいて、ブランドが不要と思っている場合、それはむしろ大きなチャンスとも言えます。

ブランディングはB2B企業には本当に当てはまらないのでしょうか。

今回はコトラー氏の著書「B2Bブランド・マネジメント」を元に、B2Bブランディングのポイントについて見ていきたいと思います。

1.B2Bにおいてブランドが必要な理由

ブランドやブランド・マネジメントはほとんどの産業で、ますます重要になってきています。

B2Bブランドが必要となっている3つの背景について見ていきたいと思います。

・類似の製品やサービスの普及

B2Cに限らず、B2B市場においても選択肢が過剰に増え、代替可能な製品、サービスが増えています。

このような状況下では、長期的に持続可能な競争優位をつくることが非常に難しくなっていると言えます。

真似ることが容易な機能的、また他社においても目標になりやすい技術的な優位性は成功要因として唯一不可欠なものではなくなり、

そういう状況の中ではむしろ強いブランドこそが差別化を示す唯一の特徴になってきていると言えるでしょう。

・複雑性の増大

多くの企業で直面している状況として、

企業は製品やサービスを単体で切り売りすることでは優位性を築くのが難しくなり、複雑なソリューションを提供するようになっています。

製品やサービスの垣根も曖昧になり、複雑性が増すことで、顧客の理解や説明も困難になっており、

そのためブランドがそうした複雑性を和らげる有効な手段、役割となっています。

・価格圧力の強さ

選択肢が多く競争が激しい状況下では、より強い価格の圧力も生じます。

何かしらの機能的な違いや少しの価値のプラスを提供するだけでは、

顧客は付加価値や強く認識できるほどのメリットを感じ取ることが難しいこともあり、価格への反映も難しくなります。

 

これらの要因からも分かるように、B2C、B2B関わらず多くのカテゴリーにおいて、選択肢が爆発的に増えており、

顧客がそのあまりに多い情報をすべて知り、十分に検討し、その違いを詳細まで把握すること、またその時間を使うことが極めて難しくなっていると言えます。

このような背景から、B2Bにおいてもブランディングが重要と言われることにつながっていると言えるでしょう。

2.B2Bにおけるブランドの重要な機能

ドイツの複数のB2B市場を対象にした調査にて、ブランドの重要性と関連性を分析した結果、

・情報効率の向上
・リスク低減
・付加価値およびイメージの改善

という要素が最も重要な機能であるということが明らかにされています。

・情報効率の向上

ブランド化すると、顧客はその情報を収集・処理しやすくなり、混乱した状況の中で方向性を見出しやすくなります。

顧客は信頼できるブランドを素早く簡単に見つけ続けることができるでしょう。

・リスク低減

ブランド化した製品やサービスを選択すれば、顧客は間違った購買意思決定をするリスクを減らすことができます。

B2Bでは特に、ブランドは製品、サービスに期待される性能や得られる便益の予測可能性に一貫性をもたらします。

・付加価値やイメージの便益の創出

顧客にとっての付加価値やイメージの便益は、ブランドによる自己表現の価値です。

B2Bのブランディングで重要なポイントは、ブランドが

顧客だけでなくすべてのステークホルダーに影響を与える

という点です。

従業員、パートナー、サプライヤー、投資家、競合他社、規制当局、地域コミュニティなど、

様々なステークホルダーの意思決定や選択、感情に影響するという点で、ビジネスや企業活動において、非常に重要であると言えるでしょう。

3.B2BとB2Cブランディングの違い

ブランドは付加価値の提供により、差別化し、リスクと複雑性を低減し、価格圧力を弱めます。

下記グラフは著書の中で取り上げられているブランド機能の重要性について、B2CとB2Bの違いを比較したものです。

 

主な発見は、B2BにおいてはB2Cと異なり、重要なブランドの機能として「リスク低減」が45%と最も高くなっていることです。

さらに41%と僅差で「情報効率」が続いています。

一方、イメージの便益はB2Cの40%に対し、14%と相対的には低くなっています。

これらはB2Bの商材やサービスがより構造上、また性質としても複雑性が高いこと、

また顧客の購買意思決定のプロセスがより複雑であり、需要が多岐に渡っていることなどが影響していると言えるでしょう。

4.ブランディングには戦略が必要

ブランドは、顧客を非合理的な購買意思決定に走らせるものではありません。

ブランドは、戦略的な資産であり、「競争優位と長期的利益」の基盤として認識される必要があります。

・ブランドは顧客との約束

ブランドをシンプルに、理解しやすくするために、有形のコミュニケーションとして広告やロゴ、タグライン等が活用されますが、

ブランドはそれ以上のものであることが示されます。

・ブランドは約束である
・ブランドは全体的な知覚である
・ブランドは、顧客の心の中で特別な位置を占める
・ブランドは、属性や便益、信念や価値への近道である

ブランド概念を「顧客の約束」として組織が内面化し、

そのブランド・プロミスを絶え間なく表現していくことによって初めて、ブランドが生かされていきます。

・ブランドは自然に育たない

ブランドは企業が行うことすべてに反映されるため、ブランディングの全体的なアプローチには、戦略の視点が必要になります。

そのため、強く包括的なブランドアプローチで成功するには、CEOやCMOなどのマネジメントクラスが、注目しコミットしていることが不可欠です。

まず最初の段階で「ブランド化するかどうか」の意思決定をトップダウンで始めることが必要となってくるのです。

ただ気をつけなければいけないのは、

ブランドは顧客の認知と連想で決まり、企業はそれを完全に規定することはできないということです。

常に顧客の視点から定義されることになる点は理解しておく必要があるでしょう。

 

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