COLUMN
デジタル広告の未来
今回のSonoda氏のレポートでは、アメリカのデジタル広告マーケティングの移り変わりを中心に、1990年代のワールドワイドウェブ普及とともに誕生し、現代のメディア広告をリードする「アメリカ・デジタル広告の歴史」についてまとめています。
世界初のデジタルバナー広告
世界初のデジタル広告は、1994年10月27日に発売された世界初の商用オンラインマガジン「HotWired」が掲載した下記のバナーです。
実にユーザーの44%にクリックされたこのバナー広告は、それまでの広告業界だけでなく他業界の流れを変えた、新しい広告の形を作ったと言えます。
静的広告から動的オンライン広告へ
世界初の静的デジタル広告を作り上げた「HotWired」は、当時、ウェブサイト上の広告スペースをMicrosoft、Nexus、OpenXなどに販売し、HTMLコードを編集して手作業でバナーを掲載する手法を取っていました。
しかし、1996年に設立された「DoubleClick」は、さらに新しいデジタル広告のあり方を生み出します。
それが、いまげは主流となっている「ターゲットを絞った広告キャンペーン」です。
どのユーザーにも同じバナー広告が表示されていた「HotWired」と異なり、ユーザーによって掲載される広告が変動する動的広告の誕生です。
この時点では、ユーザーの検索履歴に基づく分析は導入されていませんでしたが、“動的広告”の流れに乗ったGoogleが、2000年にGoogle AdWords(現在のGoogle Ads)を開発します。
ユーザーの検索履歴と閲覧設定に基づいて広告をターゲティングできるようにする広告プラットフォームとして、一気に飛躍したGoogle AdWordsは、2007年「DoubleClick」を31億ドルで買収し、デジタル広告における市場シェアを一気に独占します。
ソーシャルメディア広告の出現
Googleに対抗するように、2007年、Facebookは独自の広告システム導入により、新たな広告プラットフォームを生み出します。
SNS広告の誕生によって、広告主企業はターゲティングの幅を広げる機会を得、デジタル市場においては「検索エンジン」、「ソーシャルメディア」という2大デジタル広告プラットフォームが確立されました。
そして、GoogleとFacebook間の広告戦争とデジタル領域の開発がさらに加速していきます。ここからは、年表でその歴史をまとめます。
【Googleの歴史】
2005年:
すべての広告主向けにGoogleAdWordsにて「ネイティブGmail広告」を発表
2006年:
GoogleがYouTubeを約17億ドルで買収。現在、YouTubeは世界をリードする広告プラットフォームの1つであり、世界のモバイルトラフィックの37%を占めている
2009年:
7つのフォーマットでYouTube広告が開始(当時はトップページ広告のみ)
2019年〜現在:
Googleの広告収入は2001年の7000万ドルから2019年には1340億ドル以上に増加。Googleの総収入のうち、約71%が広告によるものと推定されている
【Facebookの歴史】
2011年:
ユーザーのニュースフィードに直接表示されるスポンサー広告を開始
2012年〜2013年:
Instagramを10億ドルで購入し、モバイル特化型広告を開始
2014年:
キャンペーン広告を開始し、よりターゲティングしやすい広告の仕組みを構築。さらに、広告セットを導入したことで、広告主の予算設定により、広告のマネジメントを最適化する仕組みを導入
2017年〜現在:
Facebook Messengerの広告がグローバル展開
Instagramショッピング、Facebookショップを導入
広告収入は2009年の7億ドル以上から、100倍の700億ドル近くに増加
デジタル広告の未来(AIの分析に人間が続く時代へ)
世界的に見ても、アメリカは最大の広告大国です。
2023年には、世界の広告業界の支出の2/3以上を占めると予測されており、2020年の世界広告支出額(5900億ドル)から換算しても、約4000億ドルとなります。
そのうち52%がデジタル広告への出資額となり、27%の出資額にとどまるテレビCMを大きくリードしています。
テレビCMや新聞広告などの従来広告は、ますます価値を失い、デジタル広告では今まで以上にAIによるユーザー分析、広告の最適化が進むと予想されます。
しかし、現代のAI技術においては、GoogleもFacebookもユーザーに合わせた広告最適化表示と予算に合わせた最適な運営は対応してくれますが、広告のデザインそのものを最適化する技術の開発には至っていません。
つまり、より細分化されたターゲットやニーズに合わせて、広告そのものデザインを設定していくのは、いまだに人間の役割です。
AIの市場分析を理解し、AIによる広告最適化を使いこなすためには、使い手である我々人間も成長していかなくてはなりません。