COLUMN
マーケティングを学ぶ最初のおすすめ本は?デジタルや最新のトレンドより先に学んでおきたいこと
マーケティングについて話をしていると、とてもよく聞かれる質問があります。
マーケティングを学ぶときに最初に読んだ方がよい本はありますか?
という質問です。
教科書のように体系だった本、ある分野に特化して深掘りできる本、最新のトレンドに沿った内容を説明するような本はたしかにたくさんあります。
ただマーケティングの本質や全体感が1冊で分かりやすくまとまり、充実した内容かつ最初に読むハードルが低い本は限られているように思います。
1.どんな本から学ぶと入りやすいか?
自身もそうなのですが、PEST、3C、SWOT、STP、4Pなど教科書的に専門用語の説明をされても読む気がなくなってしまったり、
ブランド、ビジネスモデル、顧客ロイヤルティ、カスタマージャーニー、ソーシャルメディアなどなど…間口が広くどこから入っていけばよいのか分からず、そもそも学ぶことが嫌になってしまうこともあるのではないかと思います。
また同時に、最新のトレンドや、時流に乗ったデジタルマーケティングだけを切り出して学んでも、マーケティングが持っている本質を汲み取れないまま進んでしまうリスクが大きくなってしまうのではないかと感じています。
そこで今回は、
「学術的な理論の面」と「実務で生かせる面」その双方でバランスが取れており、およその全体感や大事なポイントを押さえられる
とても分かりやすく読みやすい本を3つ紹介したいと思います。
2.マーケティングは最初に流れを学ぶと頭に入りやすい
最初に紹介するのはこちらの本です。
「ウサギくんと少年ルッコラのマーケティング物語」小川亮著
少し子供っぽく見え、ビジネスパーソンとしてマーケティングを学ぼうと考えたときに、一見躊躇してしまいそうな装丁なのですが、内容は秀逸です。
マーケティングのベースの理論に沿い、コンセプトづくりから顧客視点、4Pや競争戦略、事業戦略、サービスに至るまで、
物語のように読み進めることで全体の流れを理解できるようになっています。
特に一番よい点は、マーケティングの各プロセスがなぜ必要となったか?について、順を追って上手に説明されている点です。
主人公がモノをつくり、それを広めていくプロセスで度々つまづき、その度に新たな視点で考え乗り越えていくのですが、
その視点こそが、つまりマーケティングの中で必要となった各工程であることが理解できるような構成となっています。
マーケティングのプロセスは、最初からSTP・4Pなどとなっていた訳ではなく、必要に応じて各パートが生まれ、この流れになってきたので、
その意味や目的を理解することが、後に実務で応用していく際に最も役立つのではないかと思います。
最初に原則的なマーケティングの流れとそれぞれのプロセスの意味をつかむには最適の一冊だと思います。
3.マーケティングの本質を実務の視点でつかむ
次は多くの方が推薦されているこの本です。
「ドリルを売るには穴を売れ」佐藤義典著
最小限の理論を、最小限のカタカナで、体系的に分かりやすくという本を目指していると書かれていますが、
そのコンセプト通り無駄がなく、ここを押さえておきたいという本質が詰まった内容になっています。
知っておくべきたった4つの理論として、「ベネフィット」、「セグメンテーションとターゲティング」、「差別化」、「4P」が挙げられており、
ベースの理論に添いながら本当に必要なポイントを絞り込んでいる点
もより頭に入ってきやすい理由に思います。
こちらも物語と解説が交互に展開するような構成で読みやすいのですが、
とてもよい点として、「マーケティング部だけがマーケティングをするわけではない」「顧客に業界の垣根はない」など、
実務上、「その通り!」と
ふと我に返り自身が行っている顧客に向けた活動を、見直せるような考え方や視点が多く盛り込まれている点
もこの本の魅力です。
テクノロジーの進化などでマーケティングの手法が変わっていく中でも押さえておきたい、変わらない本質を知るには最適の一冊と言えるでしょう。
4.マーケティング自体の変化を大きな枠組みで捉えておく
最後の1冊はこちらです。
「マーケティングのすゝめ」フィリップ・コトラー/高岡浩三著
これはマーケティングの大家コトラー教授とネスレ日本CEOの高岡氏によって、学者視点と実務家視点を組み合わせ体系的に書かれたものになります。
前半はコトラー教授へのインタビュー形式でまとめられていますが、
その中で、根本的な問いである「マーケティングとは何か?」について答えを出しており、改めて原理原則を再確認することができます。
またマーケティングが日常生活に溢れ、普遍的なものであることや、
その目的が「より多くの人のために、より良い世界の構築を目指すもの」であることなど、
マーケティングの本質が何であるかが語られており、日々目の前の実務に没頭し走り続ける頭を少し冷静に
させてくれます。
さらに最も良い点としては、
コトラー教授の視点でマーケティングをより大きな枠組みとして捉え、その変遷と進化をまとめている点です。
これはマーケティング1.0から4.0という内容になりますが、マーケティングがどのような流れで進化してきたのかをとてもコンパクトに把握することができます。
このような大きな枠組みで見られるようになることで、
自社や自身が行っているマーケティングが現在どの段階に位置付けられ、この先どの方向に導いていけば良いか迷いが少なくなる
のではないかと思います。
実務に直結し即効性のあるHowを手軽に学びたくなりますが、
時により高いところから俯瞰的に眺めることで自社や自身の活動をブレない一貫性のあるものにしていくことにも役立つでしょう。
5.最初に手に取りたいのは、後の学びの土台になるような本
いかがでしたでしょうか。中には少し意外なものもあったかもしれません。
他にも紹介したい良い本はたくさんありますが、今回はまず入口の段階で読みたい本として
・1冊でマーケティングの全体感と要点を学ぶことができる
・理論と実務のバランスが取れている
・読みやすくハードルが低い
この要件を満たしている3つの本を紹介させていただきました。
もちろん1冊でも為になりますが、組み合わせて読むことで
・マーケティングの流れをつかむ
・マーケティングの本質をつかむ
・マーケティングの方向感をつかむ
これらの3つの要素をより自分自身のものとして取り入れられるのではないかと思います。
自分の中に土台(基本的な視座)をつくることができれば、その後、実践として触れ、学習を通じ得ていく、
個々の専門分野の位置付けや関連性・つながりを、より深く理解できるようになる
のではないかと思います。
すでに読まれた方ももう一度読み直してみることで、何か再発見、深い気づきがあるかもしれません。