COLUMN
「独自性」を生む強いブランドづくりはブランド・アイデンティティから
記事のワンポイント マーケティング動画
ブランドの発展は時代と共に、中心となるテーマも移り変わっています。
その変遷を大きく捉えながら、「独自性」を持った強いブランドづくりのポイントについてまとめてみたいとおもいます。
1.高まる「独自性」の重要性
ブランド研究の流れを、とても大雑把にざっくりと捉えると次のように見ることができるでしょう。
ブランドロイヤルティやブランドイメージといった個別の分野を断片的に扱う「手段としてのブランド期」
あらゆるマーケティング活動の結果としてブランド資産が築かれていくという「結果としてのブランド期」
強いブランドとはどういうものか、どのように強いブランドを築いていくかについて追求した「起点としてのブランド期」
その後、
コミュニティなどの価値共創や関係性の構築に着目した「関係性としてのブランド期」
等につながっていると言えるのではないかと思います。
顧客ニーズや環境が刻一刻と変化し続ける中、現実的に顧客から見て有意義な「差別化」を維持しつづけることは難しく、
そういう状況においては、より認知や識別を容易にしていく「独自性」の重要性が高まっていくことになります。
そのためここでは、あらためて企業のアイデンティティを創り出していく「起点としてのブランド」に着目してみたいとおもいます。
2.強いブランドづくりに必要なことは何か
強いブランドを創り出していく上で、ブランドのあるべき姿としての「アイデンティティの明確化と共有化」は必須の条件と言えます。
ブランド・アイデンティティは、企業・組織が創造し、維持しようと意図する 「ブランド連想のユニークな集合体」と言われています。
簡単にいうと、どのように認知・知覚されたいかという目標や理想像と言えるでしょう。
ブランドづくりのステップを体系的に示しているケビン・レーン・ケラー教授は強いブランドづくりに向け
「深くて広いブランド認知」と 「強く好ましくかつユニークなブランド連想」
を生み出すための活動が大切だと言っています。
またバイロン・シャープ氏は、独自のブランド資産の強さを判断するときに、考えるべき2つの基準を次のように示しています。
・ユニークであること(独自性があること)
・広く知られていること
この2つの視点に共通して言えるのは「ユニーク」であること、その「独自性」が広く認知されていることになります。
3.強いブランドをつくる手順
ブランドをつくる手順を見ておくと、より「独自性」の必要性が理解しやすいかもしれません。
ブランド論の第一人者デービッド・アーカー教授によると、ブランド構築上のコミュニケーションの主な課題には以下の3つが挙げられています。
①視認性とプレゼンスの確立
②差別化と連想イメージの形成
③顧客との関係性の構築とその維持・強化
まず
①市場の中で視認性と存在感を高め、
②独自の性質にもとづき強く好ましい連想をつくり、
③顧客の生活やアイデンティティの一部となる、深いつながりを生じさせる
よう活動を進めていくことで、強いブランドをつくっていくことができるということになります。
ここでいう「市場の中の視認性と存在感」や「独自の性質にもとづく連想」の段階においても「独自性」が深く関わってくると言えるでしょう。
4.最初に目指すのはブランド・アイデンティティの確立
もう一つ進めてみますが、アーカー氏の考えを元に、
ブランド・マネジメントの大家ケビン・レーン・ケラー教授が、ブランド構築の手順を考える枠組みとして提唱したのが「ブランド・ビルディング・ブロック」という考え方です。
ブランド構築の手順の中で、一番の土台になり、最も最初にくるのがブランド・アイデンティティを明らかにする段階になります。
投げかけられる問いは「Who are you?(あなたは誰なのか)」となり、
この段階で自身が何者かを明らかにし、より「深い認知(=そのものがなくても思い出せる)」、より「広い認知(=様々な状況で思い出せる)」を獲得していくことを目指します。
シャープ氏は、ブランディングの基本目的は
商品やサービスが誰のために存在するのかを見極めること
と表現しており、
ブランドロイヤルティが育つためには、ブランドが顧客にとって容易に認識できるよう目立たなければならない
と説明しています。
それほど、顧客のマインド内でそれが思い起こされるきっかけやカテゴリー(CEP:カテゴリーエントリーポイント)と「独自性」をもって結びついていくことを重視していると言えるでしょう。
この「ブランドとつながる道の入り口(CEP)」については、また別の機会に書きたいと思いますが、
このような全体としての大まかな要点とおよその流れ、最初に心がけるべきことを覚えておくことは、
企業の規模や業界によらず、マーケティング活動の一つの助けになるのではないかとおもいます。
5.強いブランドづくりは内部から
最後に少しインナーブランディング(社内に向けたブランディング)について触れておきたいとおもいます。
強力なブランドを構築するにはまず内部から始めることだ
これはデービッド・アーカー氏の「ブランド論」に記載されている一文で、
強いブランドをつくるには、インナーブランディングが重要になると言えます。
構築していくアイデンティティを「製品・組織・人・シンボル」等の視点で整理し、
顧客への価値提案を明文化、関係者間で共有していくことによって、
ブランドの「振る舞い」に一貫性を生みだしていくことになります。
強いブランドづくりのファーストステップは
ブランドのありたい姿を明確にすること
です。
理想的には、社内でブランドの価値観を共有化し、社員の意識や行動を、 ブランドの方向性と合わせていき、
主体的にブランド・アイデンティティに即した行動ができる人材やチームを育成していくことが
「独自性」を持った持続性ある組織の文化づくり
につながっていくのではないかとおもいます。