COLUMN
ビジュアル広告デザインの移り変わり(前編)
今回は、US在住の広告ディレクターSonoda氏が米国のビジュアルデザイン広告のトレンドについて、時系列でまとめています。
前編として、消費者の生活スタイルの変容に合わせて、デザインそのものの考え方やあり方が変わった2014年から2017年、
効果的な広告訴求効果を受け継ぎながら、毎年少しずつ変容を遂げてきたデザインの流れが見えてきます。
1.2014年「遠くの大きなデザイン」から「手の中のデザイン」へ
・フラットデザインが流行
・ビジュアルから立体感が消え、カラーもフラットに相性の良いパステル調(落ち着きのある色)に
・タイポグラフィも全盛期を迎え、文字をデザインしたウェブサイトや広告が流行
2014年は「モバイルファースト」という概念が社会に浸透し始めた時期でもあります。
そのため、消費者が広告に触れる機会はテレビやポスターなど「遠くの大きなデザイン」から、「手の中のデザイン」へと変化しました。
スマートフォンの小さなスクリーンで、広告の訴求効果を最大限高めるため、デザインの中にインパクトや存在感よりも「見やすさ」が重要視されるようになり、
必然的に優先順位が高くなった「文字」をデザインするトレンド(タイポグラフィ)が流行しました。
2.2015年「ミニマルデザイン」が流行
・ミニマルデザインが流行
・被写体やメインコピーを画角最大限に広げた広告、ウェブサイトが多く目立つようになる
2014年の広告の移り変わり(デザインデバイスがスマホへ)の影響を受け、2015年も引き続き「デザインのシンプル化」が進みました。
そのトレンドはスマホ用ビジュアルデザインのみならず、PCなどの大画面デバイスにおける広告やウェブサイトにおいても顕著に現れ、
ビジュアルを見た瞬間に飛び込む大きな文字と大きな写真による広告デザインが主流となりました。
3.2016年「タイポグラフィ」の進化
・タイポグラフィが進化し、さらにデザイン化された文字が誕生する
・デザインのミニマル化はロゴにも
・幾何学模様が多用されるようになる
文字をデザインする意識が、すでにデザイン界の常識化していた2016年には、文字とグラフィックを一体化するトレンドが流行しました。
また、デザインに掲載する以上どうしても小さくなってしまうロゴがミニマル化され、グラフィックそのものも見易さへの意識が見られたのが2016年です。
これまで見やすいロゴといえばシンプルなものを指していましたが、複雑なラインアートを組み合わせたロゴでも見やすく伝わりやすいデザインが誕生するようになった点は大きな転機と言えます。
幾何学模様が多用されるようになった背景にも、「見やすさを追求しつつもデザインの幅を広げる」ことを追求した結果と言えるでしょう。
4.2017年「ポップカラー」の再燃
・ポップカラーが再燃し、パステル調のカラーデザインは下火に
・タイポグラフィは、文字と写真を一体化させたデザインに進展する
これまで「シンプル化」を目指すばかり、削ぎ落とされてきたカラーに、再びポップカラー調が返り咲きます。
その大きな理由にインスタグラムのロゴが誕生したことが挙げられます。
インスタグラムのロゴが上記画像のものに変更されたことで、ポップカラーでも見やすさを担保したうえでデザイン性の高いグラフィックが両立できることが証明されました。
見やすさを追求しながら、デザイン性の幅を広げるなど、デザインという切り口で見ると、進化やチャレンジがある点が非常に興味深いです。
また2013年に世界での携帯電話普及率は約95%に達した後、モバイルファーストといった考え方が生まれ、インスタグラムが登場した2016年など、
人の生活や行動の変化に伴い、ビジュアル広告のデザインも移り変わっていっていることが分かります。
次回は、2018年から2020年のデザインの変遷について見ていきたいと思います。