COLUMN
SIPSとは?ソーシャルメディアでの新しい消費者行動モデルを解説
情報伝達がデジタル化したことによって、消費者の購買行動に大きな変化が現れました。
ソーシャルメディアを利用している人たちに対して、「SIPS(シップス)」と呼ばれる消費者行動モデルを意識しておくことが重要になると提唱されています。
TwitterやFacebookなどのSNSの情報が生活に密着し、コミュニケーション方法に変化がみられる中で、「SIPS(シップス)」の考え方も理解しておくとよいでしょう。
1.SIPS(シップス)とは
SIPS(シップス)とは
「Sympathize:共感する」
「Identify:確認する」
「Participate:参加する」
「Share・Spread:共有・拡散する」
の頭文字を取ったもので、企業のソーシャルメディアを活用した消費者の購買行動モデルのことを指しています。
従来のマーケティング施策においては「AIDMA(アイドマ)」や「AISAS(アイサス)」が購買行動を考える際のモデルとして活用されてきました。
これらのフレームワークでは購買に対する行動に焦点が当てられていましたが、SIPSにおいてはソーシャルメディアを積極的に活用したコミュニケーションに焦点を当てた新しい消費者行動モデルとして考えられています。
①Sympathize:共感する
ソーシャルメディアが発達した現代においては、消費者の購買行動は「共感できる(Sympathize)」情報を見つけることからスタートします。
社会は情報に溢れていますので、自分にとって有益な情報にたどり着くことが難しくなりました。
しかしtwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで共通の話題や興味を持った人と繋がることができるようになり、自分にとって価値があると思われる情報を瞬時に受け取ることができるようになりました。
信頼できる友人や有名人などがその情報を共有しているのであれば、信頼度の高さは大きいと言え、共感を生む要素となることは間違いありません。
そのため企業においてはただ単に商品に対する広告を打つだけではなく、その情報に共感してもらう必要があると考えられるのです。
②Identify:確認する
消費者はその情報に価値を感じ共感したとしても、すぐに購入することはなく、本当に有益なものかどうか「確認する(Identify)」行動に至ります。
そもそもその情報が本当に正しいものかどうか分かりません。
発信元に対して少なからず疑いを持って慎重に行動するようになりましたし、
価値のある情報だと感じてもさらに他の媒体での情報などと比較することもあるでしょう。
友人や知人、家族などに直接、意見をもらうことによって、自分の価値観にあっているかどうか確認するということも少なくありません。
それらの意見をもとに判断し、納得することができれば、ようやく次の段階へと進むことになるのです。
③Participate:参加する
SIPSにおいては商品を購入するだけが目的となるものではなく、購買を伴わない友人・知人に広める行動においても「参加(Participate)」と考えられます。
自分自身が価値を感じた情報については、ソーシャルメディアにおいて「いいね」したり、「リツイート」することによって友人や知人に広めることが可能です。
また批判的な情報に対して擁護し、応援するような行動をとる行動もあるでしょう。
そのような行動すべてが友人や知人に共感が得られ、購買に繋がる可能性があります。
そのためSIPSでは実際に購買を伴わない行動であるとしても、共感が得られる可能性が高いとして「参加(Participate)」という行動が重要だと考えているのです。
④Share・Spread:共有・拡散する
ソーシャルメディアにおいて価値を感じた情報は、「いいね」や「リツイート」によって、友人や知人などにどんどん「共有・拡散(Share・Spread)」されていくことになります。
拡散されればされるほど、参加者を増やすことができるため、とても重要なステップであると言えます。
特にその情報に魅力があり、とても有益な情報であれば、発信者が誰であるかはそれほど重要ではありません。
しかもこの情報は属しているソーシャルメディア内に拡散されるだけではなく、ほかのコミュニティにも伝搬していきます。
多くの人に共有・拡散された情報はとても安心できますから、「確認する(Identify)」うえにおいてもとても効果的なのです。
2.SIPSの流れを意識することが大きな意味を持つ
SIPSにおいては、「Sympathize:共感する」「Identify:確認する」「Participate:参加する」「Share・Spread:共有・拡散する」といったコミュニケーションの流れが、とても重要になります。
この流れはループとなり、どんどん大きな規模になっていくからです。
情報を拡散しているのが企業ではなく、消費者自らであるということがSIPSの大きな特徴だと言えます。
今までの伝統的なAIDMA、AISASなどだけではなく、ソーシャルメディア時代に適したSIPSの流れを意識していくことで、より効果的な認知や購買行動の機会に繋げていくことが可能となるでしょう。
3.小さな会社やサービスでは共感という基点がとても大事
特に規模の大きな広告や、多くの店舗や人的リソースを使うことができない小さな会社においては、
このように共感を生むことから始め、多くの仲間を増やしながら情報を広く共有してもらうテコの原理を生かしていくことは大変重要になってきます。
広告という外側からの気づきを与えるアプローチとも異なり、基点が共感という価値観の共有であるため、同じように熱を持って周りに発信をし、さらに共感の輪が広がっていく流れを築くことができます。
消費者や顧客という捉え方よりも、同じ大切なものを持っている仲間にどう役立てるか?ともに抱える問題の解決を推し進めていけるか?といった感覚の方が自然な、持続的な活動になっていくでしょう。
4.同じ目線、本音で活動をしているか?
SIPSのフローに「Identify:確認する」「Participate:参加する」というプロセスがあるように、
ソーシャルメディアにおいては、いかにそのコミュニティの中で活動している人たちと同じ目線、近い感覚で活動やメッセージの発信がされているかということも大切になります。
関わる人たちは、その人の過去や日常の振る舞い、言動なども遡って確認し、相互のコミュニケーションを図って反応をみるなど、
その活動やメッセージが信頼に足るものであるか?嘘偽りのない本音、本物なのか?ということも確かめようとしています。
その場だけを取り繕うような振る舞いや言動はすぐに見抜かれてしまうでしょう。
その組織や自身が本当に感じていること、信じていることを素直に発信していける方が多くの自然な共感を生み、結果、持続可能な活動につながっていくことになるのではないかと思います。