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新たな体験価値で市場を開くクラフトビールとamazon

今回は、米国在住の広告ディレクターSonoda氏に新たな「体験価値」で市場を開いたクラフトビールストアとamazonのサービス事例について、レポートをしてもらいます。


1.新たな市場を開いたクラフトビール

「価値体験を上手に体現している」というキーワードで、まず思い浮かぶのはクラフトビールストアです。

アメリカでアルコール飲料と言えば「ビール」が一般的です。

そして、ビールに対する一般的なイメージは「バーや自宅で飲むもの」でした。

言い換えれば、「何かをしながら飲むアルコール」がビールであったと言えます。

バーでスポーツ観戦しながら、自宅で友人とBBQをしながら、夜にテレビを見ながら、

といった具合に「何かをしながら」嗜むものというのがビールに対する一般的な認識であり、

アメリカのビール文化において、ポップの風味にこだわったり、ラガー独特の喉越しを堪能するという楽しみ方は根付いていませんでした。

アメリカのビールといえば、バドワイザーやクアーズなど、薄味で何杯でも飲めるようなテイストのものが多かったのがその証拠です。

・クラフトビールの誕生

そんな中、2010年代に入り、新たなビールの楽しみ方として「クラフトビール」が誕生しました。

ラガーでもIPAでも、ビールの味そのものを楽しむ新たな体験価値を生み出した「クラフトビール」は、少しずつビール好きの間で広まり、各地にクラフトビールストアが誕生しました。

それらクラフトビールストアでは、ビールの香り、色、音を楽しむことができ、店内で製造しているところも多いため、製造過程まで見れるエンターテイメントの場として地域に根付いています。

アメリカの一般的なバーと違い、基本的にクラフトビールストアでは店内に大音量のBGMやスポーツ中継を映した巨大モニターなどは存在しません。

そのため、ビールを「嗅覚、聴覚、味覚、視覚」で楽しむことができます。

・ビール自体を楽しむという価値観

これまでのビールシーンに存在していた「〇〇するために××に行く。そこにビールがある」

例えば、「アメフトの試合を友達と観戦するためにスポーツバーに行く。そこには当然ビールがある。」

という根本的なイメージを覆し、「ビールを楽しみたいから、クラフトビールストアに行く」という価値観を生み出したことは、アメリカのビール市場において大きな転機となりました。

これまで、それ自体を楽しむアルコール飲料といえば、

ワインかウイスキーだけだったアメリカのアルコールマーケットを大きく変えたクラフトビールの誕生は、

若者にも受け入れられ、今では「ちょっと気取りたい時はクラフトビールストアに行く」という文化も根付いています。

コロナ禍の影響も受けてはいますが、市場におけるクラフトビールのシェアも年々拡大しています。

参照: Craft beer share of retail beer market in the United States from 2012 to 2020

2.amazon.comの試着トライアルサービス

もうひとつ、体験価値の提供で最近現れた面白いサービスがあるのでご紹介します。

大手Eコーマスサイト「amazon」が提供する「Try before you buy with Prime Wardrobe」です。

・オンラインの「試着」問題を解決

消費者がお金を払う前に、amazonで出品されている衣類を試着できるサービスで、これまで、オンラインショッピングでハードルの高かった「試着」という体験を解決した画期的な施策になります。

「Try before you buy with Prime Wardrobe」を使うことで、amazonユーザー(現時点ではプライムメンバーに限る)は、

支払いをする前に試着したい衣類を受け取り、買うか買わないかを判断することができるようになりました。

一度購入した服を返品し返金を受け取ることは以前から可能でしたので、amazonユーザーは、とりあえず買ってみて、気に入らなかったら返品する、という手順をとっていました。

しかし、返金に数日〜数週間ほどかかったり、返金はamazonストア内のポイントに限られるなどの障壁はありました。

ところが、「Try before you buy with Prime Wardrobe」の誕生により、それらが一気に解消された形になります。

・広がりを見せるECでの試着体験

 メンズブランドで言えば、下記のようなストアが「Try before you buy with Prime Wardrobe」を取り入れており、

消費者は自宅にいながら、実店舗で試着をするように、自分に合ったサイズや色、デザインの服を購入前に試着できるようになっています。

オンラインでは得られなかった「体験価値」を、オンラインで見事に実現し、今後はebayなど他のECモールでも導入されるのではないかと予想されます。

レポート:広告ディレクター Sonoda


オフラインはオンラインに包含され、主従が逆転するとされるOMO(Online Merges with Offline)の時代。

マーケティング5.0においても、カスタマージャーニーをいかに合理的に、自然な形で、

人とAI(オフラインとオンライン)を共生させながら、ストレスのない心地よい体験を設計するかがカギになっています。

体験価値は今後もますます重要なものになっていくでしょう。

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