COLUMN
Amazon US リアルで加速する自動化の動き
商品を手に取り、レジを通さず店舗から持ち出すだけで自動的に決済が済むAmazon Goストアに続き、
米アマゾンは一般のスーパーマーケットでも生産を自動化する仕組み「Amazon Dash Cart」を発表しました。
今回は米国で広告ディレクターとして活躍するSonoda氏より、Amazon USの動向についてレポートいただきます。
1.Amazon Dash Cartで店舗の買い物も自動化
Dash Cartは、Amazon Goストアで使用されている決済AIテクノロジーに基づいて設計されており、キャッシャーレスショッピング体験を別の形で実現した仕組みと言えます。
買い物カートにタッチスクリーンを搭載し、QRコードを使用してサインインするスマートショッピングカートとなっており、
内蔵のカメラ、センサー、および計測器の組み合わせにより、買い物客がカートに入れたものを自動的に検出する仕組みです。
その後、買い物客はショッピングカートを持って店を出るだけで、
Amazonアカウントにリンクされたカードから商品の合計金額が差し引かれるので、レジに並ぶ手間や時間を削減することが可能です。
2.Amazon Goとの違い
商品を手に取り、支払い作業をすることなく店を出るという、全体プロセスは、Amazon Goで提供しているシステムと似ていますが、
大きく異なるのが、AIの判断を、店舗内にあるカメラに頼っていないという点です。
Dash Cartは、Walmartなどの大規模ストアではなく、中小規模のスーパーマーケット向けに開発されたものであり、
これにより、大掛かりなAIカメラシステムを導入することなく、様々な店舗で自動生産スキームを実践しやすくなりました。
現在は、ロサンゼルスのWoodlandと隣郡であるオレンジカウンティのIrvineにあるAmazon Fresh(Amazon直営の生鮮スーパー)で導入されており、
今後はWhole Foodsなどの第三者への導入も検討されています。
Dash Cartの実働風景はこちらのYouTubeで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=miCGDT8L17c
3.ドローン配達が米連邦航空局認可を取得
数年前に一度テストが検討され、その後の進捗が緩やかになっていたAmazonのドローン配達ですが、
米Amazonは今年8月31日に米連邦航空局のドローン運用に関連する認可を取得したと発表しました。
これにより、Amazonは正式にドローン配達の実現を可能とし、同社と消費者に多くのメリットを及ぼすと見られます。
・ドローン配達による期待できる効果
広大な国土のアメリカでは車両配送による時間的制約は避けて通れませんが、ドローンを使うことで、交通渋滞を回避することができます。
注文から1時間以内に商品を手元に届けるシステムが確立できる他、低コストでの配達を実現できるため、
注文から到着までPrimeメンバーでさえ1-2日待つことが当たり前だったオンラインショッピングを、
より迅速に、その時必要なものまでもオンラインで購入することができるようになります。
また、ドローン配達が実現すれば、より安全なスペースへの着陸も可能になります。
そのため、買い物客が不在時には玄関の前やバルコニーに置かれていく
Amazonの段ボール箱を狙った窃盗被害からも免れることができ、トラックドライバーによる誤送のリスクも減るでしょう。
4.ドローン配達導入に向けての課題
コンタクトレスデリバリーが一般化したCOVID-19以降の配送フローにおいては、
ドライバーの誤送が増えており、リターンや返金などのカスタマーアフターケアの割合を大幅に削減できることが見込まれるため、
Amazon社にとっても、コスト、リスクの両面で大幅なカットが実現できると期待が膨らんでいます。
ドローンの活動範囲は半径10マイル未満(半径16km未満)程度に制約されるため、
これまで以上のデリバリーポイント増築と、ドローン部隊の確保、実機ドローンの大量導入などの障壁や、
ドローンが自宅上空を飛行することへの抵抗を示す住民の説得など、規制上のハードルは残されているため、それらをクリアしていかなければなりません。
・技術的ハードルの克服と理解の促進
しかし、技術的ハードルに関しては、今年中に配送オペレーションのフレームワーク完成と、ドローン機に購入者の実物確認システムを導入、
テロリストの阻止、空中衝突を避けるためのシステムなどプログラムを実装可能と報告されているため、
残された懸念点はAmazon利用客以外からのサービスに対する理解促進がメインになっている現状です。
広告ディレクター
Sonoda Kazuma
Amazonは2021年末までに、比較的障害物の少ない郊外でドローン配達の実用化を目指すとしています。
2026年までにはロサンゼルスやニューヨークなど高層ビルが立ち並ぶ大都市での実用も可能にする見込みとなっており、
オンラインの浸透や進化だけでなく、リアルにおける自動化も大きく進み、人々の生活に新しい価値やスタイルをもたらしていくでしょう。