COLUMN
B2Cの主流はオンライン+リアルミックスへ
以前のレポートでも触れましたが、アメリカのマーケティングの主流はオンラインへ移行しています。
ただ各ブランド、販売業者がリアルを蔑ろにしているかと言われれば全くそうではありません。
今回は、これまでの実店舗のあり方に変化を加え、新しい存在意義を与えたオンラインマーケティングトレンドについて、US在住のマーケターSonoda氏にレポートしてもらいました。
その中で特に注目すべき、次の5つの切り口を中心にまとめています。
・ダイレクトなターゲットへの訴求
・シンプルなインターフェイス
・柔軟な決済システム
・キュレーションストア型の店舗
・ニッチマーケットへの訴求
キーワードは「ダイレクトのオンラインと、実店舗の新たな存在意義」です。
1.ダイレクトなターゲットへの訴求とシンプルなインターフェイス
レポート「2020年の米国内SNSマーケティングトレンドは?」でSNS広告が商品画像をそのまま掲載することで、
よりダイレクトに見込み購買客を商品ページへ遷移させるようになってきていることを記載しました。
「ユーザー中心思考」がより確立され、広告を見た者が不快にならないよう、自社サービスに興味がある見込み客のみを確実に、取りこぼさないよう訴求していくスタイルへの変容です。
・洗練されたターゲティング
ユーザーの興味は、その数だけ多種多様です。
例えば、同じメジャーリーグ好きでも、ファン球団は違うし、お気に入りの選手も様々です。
私もMLBチャンネル(https://www.mlb.com/network)に登録して、時間があれば野球観戦をしますが、その履歴から掲載されるウェブ広告は贔屓球団のものばかりになっています。
私の場合、ロサンゼルス在住ながらデトロイト球団のファンですので、ホームスタジアムに観戦に行くことは不可能です。
しかし、バナー欄の広告は、「Watch the Tigers game from California」といった内容が掲載されるまでにターゲティングされており、
さらにはロサンゼルスからミシガン州までの格安航空券広告等も表示されるので、その精度には驚くばかりです。
・シンプルなビジュアル
そして、そのどれもがシンプルなものであり、日本のビジュアル広告のように凝りすぎて結果的に訴求効果が薄れてしまっているものは多くありません。
「WEB広告なんかどうせ読み飛ばされる」という事実背景のもと、0.1秒で見込み購買客の目に止まる広告デザインとレイアウトが主流になっています。
2.柔軟な決済システムとキュレーションストアの店舗
それと連動するように、決済システムも柔軟に多様化しています。
・多様で柔軟な決済
アメリカはもともとキャッシュレスが進んでおり、コンビニで1ドルの飲み物を買うだけでもクレジットカード(クレカを持てない人はデビットカード)で支払う文化です。
小銭のみならず紙幣を持ち歩く人も多くありません。
現在ではクレカそのものも携帯に登録できるので財布を持たず買い物がどこでも可能ですし、店員側も嫌な顔をしません。
その中で、これまで携帯決済で主流だったApple payやGoogle payに変わって、SNS各社、Amazonなども独自決済システムを採用しています。
またAmazonはサンフランシスコに実店舗Amazon goをオープン(2018年)し、商品を手に取り、店を出るだけで支払いが済むという仕組みを確立しました。
Amazonは2021年までに全米に実店舗を3,000店舗まで増やすと発表しています。
・リアル店舗の新しい位置付け
また、大手百貨店のNordstromはオンラインショップの課題であるタッチアンドトライ(試着やお試し)を解決するため、
2017年に「販売しない店舗(タッチアンドトライだけのための店舗)」を出店しています。
店側としては在庫を抱える必要がないので、流通コストも広大な店舗に必要な家賃も大幅に削減できますし、
オンライン消費者が抱えるタッチアンドトライという問題も解決するマーケティング指針で独自戦略を展開中です。
現在の店舗数は大都市にはほぼ存在するまでになりました。
※参考:プレスリリース
・無駄を排除する新たなミックスマーケティング
これは無駄を排除するオンラインとリアルの新しいミックスマーケティング戦略と言えます。
このNordstromの例がAmazonによるAmazon Goの実現に少なからず影響を与えていると考えています。
というのも、それまでのAmazon USAは、ドローン配送による運送時間の削減など、明らかに「打倒実店舗」とも取れる施策を行っていたように感じるからです。
・リテールのオンライン活用
アメリカでは個人間のオンライン送金はVenmo(ベンモ)というアプリで送金することが主流となっており、1〜3営業日中に送金可能なうえ、手数料もかかりません。
また、各銀行も携帯アプリが充実しており、小切手の入金(チェックの裏表を写真に撮るだけ)や送金、
クレジットカードの残高支払いなど全て可能ですので、銀行に出向くのは口座を作るときだけということがほとんどです。
私が渡米した2014年時点で既に当たり前のように普及していましたので、
日本と比べてオンライン決済システムが進んでいると強く実感したことを記憶しています。
3.ニッチマーケットへの訴求
上記の通り、アメリカではマーケティングのみならず社会全体がシンプルで便利なものへと進んでいると言えるでしょう。
・コアターゲットに精度高く届ける
自社サービスをいかにしてコアターゲットに届けるかがポイントであり、追尾型広告の精度や多様かつ便利な決済システム、Nordstromの試着型店舗の例まで、
全てはニッチかつコアなターゲットを狙い撃ちし、もれなく獲得するという背景の元に存在すると考えられます。
・オンラインとリアルの融合
消費者が実際にお金を落とす場所はオンラインでありながらも、
リアル店舗では、人同士のつながりやディスプレイ・タブレットによるスマートな利用体験、
コミュニティイベントによるエンゲージメントなど、販売ではない役割を担っています。
オンラインとリアル店舗をうまく融合させることで、コアターゲットを取りこぼすことなく、新たな新規見込み客も獲得できる仕組みが確立されつつあるのが昨今のトレンドと言えるでしょう。
Kazuma Sonoda(アメリカ ロサンゼルス在住|広告ディレクター)
ポートフォリオ:http://ksonoda.lsv.jp
ブログ:https://ksonoda.com
4.フリクションレスと体験価値
Sonoda氏のレポートの通り、アメリカではよりOMO(Online Merges with Offline)と言われるユーザー起点のオンラインとリアルの融合が自然な形で取り入れられており、
「オンラインとリアル店舗の新たな存在意義」の確立が進んでいます。
かつてディズニーが一度手離したディズニーストアを再度買い戻したのも、
年間でディズニーランド以上の顧客が訪れる(2010年当時で4000万人以上の来店)タッチポイントとしての役割や価値が非常に大きな意味を持っていました。
ユーザーにとってのストレスやつまづきを排除するフリクションレスな行動デザインや、体験価値を提供するオンラインとリアルの新しい関係性の設計は、
Withコロナ、Afterコロナを経て、今後ますます重要性を増していくことになるでしょう。