HOMEコラムマーケティング思考小さな会社にこそアドバンテージ。変化の時代を生き抜く方法

COLUMN

小さな会社にこそアドバンテージ。変化の時代を生き抜く方法

2018年に独立し、激戦区の恵比寿・広尾で1人奮闘している美容師の平田さん。
完全予約制でプライベート空間を提供するヘアサロン「ルーチェ」は、平田さんのたしかなスキルとリラックスできる心地よい貸し切り空間を強みに、開業以来リピート率はなんと90%。ただ、一番の悩みは「新規のお客様が来ない」こと。
マーケティング伴走支援を行う上で、一番の課題として掲げたのは「1人運営の中でどう効果的に新規のお客様を呼べる仕組みをつくるか」ということでした。

1.小さな1人店舗が抱えていた課題

元々、恵比寿の大手ヘアサロンで美容師をしていた平田さん。
現在のお客様は、前のお店で平田さんが担当していた方が、広尾のプライベートヘアサロン「ルーチェ」に訪れるというケースがほとんど。

既存のお客様からの紹介経由で一定の新規のお客様も訪れますが、全体の約1割と新規のお客様の数は限定的でした。

・新規のお客様が訪れない?

プライベートヘアサロン「ルーチェ」は、ビルの2階に入っており人目につく路面店ではなかったため、新しいお客様が通りがかりで来店するようなことはありませんでした。

近くを通りかかった方が新たに店を見つけられる可能性は低く、自然な形で認知されることは臨めないロケーションでした。

また費用をかけて広告を出したり、HPに人が訪れるようコンテンツ制作やSNS等に取り組もうにも、その方法も分からず、そこに時間も割くことができない状況でした。

1人や少人数で運営しているブランドやお店では、日々の業務に多くの時間を費やし、少し先をつくっていくマーケティング活動には手が回らないというケースは非常に多いです。

その点は「ルーチェ」も同様であったため、今回のケースにおいては

リソースが少ない1人運営を前提に、紹介以外のルートから新規のお客様に認知され、来ていただける流れを作ること

これが「ルーチェ」の伴走支援で最初に掲げたテーマでした。

2.最大の強みリピート率90%

「ルーチェ」の価値を整理していく中で際立っていたのは、リピート率が非常に高いことでした。

主要なデータを調べていくと、開業以来、一度訪れてくれた方が半年以内に再訪してくれる確率は90%を超えており、来ていただくことができればかなりの確率で継続いただけることが分かりました。

・新規のお客様はどこに価値を感じているのか?

恵比寿の時代からついていたお客様については、ヒアリングから気を遣わせない平田さんの人柄やスキルに惹かれていることが分かりました。

中長期的には、この要素が最も効いてくるのですが、今回の課題はあまり事前の情報やポジティブなおすすめの声を聞かないまま訪れる「紹介以外の新規のお客様」となるため、

事前にお客様がイメージしやすい価値や、お客様が抱えている真の課題を見つけることが必要でした。

・お客様の真の課題・痛みは何か?

そこで手がかりを探るため掲載サイトの口コミコメントやお客様の声を分析したところ、

多くのお客様が

貸し切りで他のお客様に気を使う必要がない、リラックスできる「プライベートヘアサロンの空間」

をとてもポジティブに捉えていることが分かりました。

裏を返せば、他のヘアサロンで当たり前のように受け入れていた形は

気を使い複数の中の1人として過ごす空間・細切れの時間
=ストレスを感じ我慢している空間・時間

であり、その課題を解決し

気を使わない自分だけの空間・時間
=リラックスした自由な、無駄のない空間・時間

を提供していると言えるでしょう。

その点をクリアに価値の中心に据え、新しい層を水平に広げる方法を探ることが最初のステップになりました。

3.逆転の発想。「新たなお客様が突然来ない」ことを生かす

完全予約制であり空間を貸し切ることができるため、「今、カットに来ているお客様だけの空間」をつくれることはプライベートヘアサロンならではの一番の強みでした。

お客様からすれば、他のお客様に気を遣う必要も、途中で待たされる時間もなく、リラックスしてその時間を過ごすことができます。

・親子だけの空間でカットできるという新しい価値

もちろん中心の顧客層となる30〜40代の女性にとっても魅力的な価値となっていましたが、

キッズカットも併せて頼みたい層にもフィットするのではないかとの仮説を立て、リーズナブルにキッズカットもできることを露出したところ、多くの新規のお客様が訪れました。

お子様を一緒に連れてくる場合、特に周りのお客様に迷惑がかからないかと気を遣ってしまう方は多いですが、

完全貸し切りのプライベートヘアサロンでは、他のお客様に気を遣う必要がないため、

キッズカットも気兼ねなく頼むことができ、その時間をリラックスして過ごせるという点で価値を感じていることが、お客様の声からも分かります。

新しいケースとして、キッズカットのみで訪れ、良いと判断してから自身のカットもお願いするというお客様も訪れています。

これらの声からも改めて

周りに気を遣わなければいけない時間という痛み

を取り除きたい層のお客様が訪れていることが分かります。

カットをしてもらっている間、「誰にも気を遣わなくてよい」という心理面の価値を重視することは十分にお客様の課題に応えることになるでしょう。

4.まず手の届く小さなことでクイックウィンを目指す

では具体的なアプローチはどのようにすべきなのでしょうか。

小さな会社におけるマーケティング伴走支援での鉄則になりますが、

最初から本質的な中長期的な課題に手を打つのではなく、まずは現状すぐに実行でき、改善の効果が早く見込めることから始めることはとても重要になります。

小さな会社であればあるほど、本質的な課題に取り組まなければと分かっていても、なかなか効果が出るまでに時間がかかる施策を優先することは難しいものです。

そのため初期に即効性のある手を打ち、早い段階で一緒にその効果を感じながら、継続的に本質的な課題の解決に向かえるだけの時間を生み出すことが大切です。

・手持ちの手段を洗い出し、順序をつける

「ルーチェ」が持っていた新規獲得のルートは、主に3つ。
他にも候補はありましたが、あまり複雑にならないよう一旦この3つに絞り検討を進めます。

1)既存のお客様からの紹介経由
2)自社のHP・SNS経由
3)外部サイト掲載経由

1)既存のお客様紹介
年間来店客数の10%程度。伸ばしていきたいところですが、ここを急ぐことで既存のお客様に負担をかける可能性があるため、少し長い目で取り組む方がベター。

2)自社HP・SNS
ヒアリングによると開業当初にHPは制作。ただ何もメンテナンスはしておらず、HP経由の問い合わせも入っていない。先の可能性があるため取り組みたいが、今はコスト捻出が難しい。SNSはノウハウ分からずまだ手をつけていない。

3)外部サイトへの掲載
若干コストはかかっているが、現状は唯一コンスタントに一定数の新規のお客様が来るルートになっており、掲載方法の改善やテコ入れで早期に反応を増やせる可能性あり。

より本質的な中長期的な本命は、1と2になりますが、このケースでは3→2→1の順序をつけ進めることにしました。

現状確実に一定のアクセスが見込める3のルートに対し、コンバージョンの確率を上げるためのテコ入れを促すことが最も即効性があり、時間的には優先的な施策となりました。

まだ小さな会社ではリソースが限られるため、行うべき施策で気をつけなければいけないのは、施策の「順序付け」と「取捨選択」です。

中でもこの「順序付け」において、中長期と短期を分け、短期を最初に持ってくることが必要になります。

それは先に記載したように中長期で打つ施策が効いてくるための時間・余裕を生み出すためです。

・安易に広告を切ることはリスクもある

また費用を抑えることばかりを優先し、若干の費用がかかる露出や広告を安易に切ることは集客を先細りさせてしまう可能性もあり危険です。

あくまでも結果として、現状の目的に成果を上げているものを見定めながら、より質や効率を上げていくことに、段階的にシフトしていくことが必要になります。

「無料で集客できる」という言葉は魅力的ですが、短期間で全てをSNSやコンテンツマーケティングで解決しようとすることは少し無理があるでしょう。

新たなお客様が気づき、知っていただくために何かその機会をつくっていく必要があるため、できればその露出を維持し、その間にSNSやコンテンツの準備していくことが効果的です。

ヘアサロン「ルーチェ」についても、同様に現状動いているものの可能性を最大限引き出すことを優先し、その間に美容師さんが1人でも動かしていけるSNS等のノウハウを伴走しながら支援していくことがベターでした。

マーケティングは単発的な施策で捉えるものではなく、継続的に活動を重ね、全体を連動させながらより本質に働きかけていくものであるため、持続可能なオペレーションを考慮しておくこともとても重要になります。

5.非合理的なことこそスペースを生み出せる

完全貸し切りとすることは、商売の効率性からは逆行しています。

他のヘアサロンはむしろ一度の時間帯に複数のお客様を入れ、複数の美容師さんが対応する形となっています。

モデルとしても、より多くのお客様を一度に効率的に入れ、効率的にサービスを提供していくことを前提に、付加価値を乗せていく方法を取ることになるでしょう。

そのため、

周りに気を遣わなければいけない時間という痛み

を取り除くための価値を提供することは難しくなります。

つまりこの時点で、激戦区であった恵比寿・広尾エリアにおいて、一気に競合しなければいけない相手が減ることになり、

同時にプライベートヘアサロン「ルーチェ」が提供する

気を使わない自分だけの空間・時間
=リラックスした自由な、無駄のない空間・時間

の価値が高まることになります。

真似たくても真似ることが難しい価値になるのです。

独自性や差別化を考えるとき、その持続性(模倣の難しさ)を考えておくこともとても大切なポイントになります。

6.逆風を乗り越え新規予約数・売り上げは4倍に

美容室には一連の新型コロナの影響が直撃、ルーチェも例外ではありませんでした。

3月は休業リストにも入らずどのように対応すべきか判断も難しい中、他の地域では美容室がクラスターの根源のように扱われるなど、その影響はルーチェにも及び、新規の予約も売り上げも半減する事態となっていました。

・顧客のニーズに合った中核の価値を発信し続ける

人が動かない、また動くよう働きかけることも社会全体としてはしない方がよい。

このように先が見えない状況で行ったのは給付金や助成金などで万一の際のディフェンスを固めることと

人が動けるようになる時に備え、中核の価値である「完全貸し切りプライベートヘアサロン」にフォーカスしメッセージを発信し続けること。

3月、4月は人が来ないことは分かっており、少しでも費用を削りたい状況であることは十分理解していましたが、絶対に露出を落とさずに今は世の中にマッチしたメッセージを発信し続けながら、その先をつくっていくことを心がけました。

結果、ゴールデンウィークの休業を挟み、5月の新規予約数はコロナ禍で落ち込む前の3ヶ月平均に比べ約4倍となり、6月もそれを上回る数の予約が入っています。

「完全貸し切りプライベートヘアサロン」であるということがお客様の安心につながり、選択肢の中で選ばれているということになります。

・自然に持っている価値を引き出し伝えること

人や組織が持っている自然な姿、強みの上に価値を築くことはブランドづくりで大切なことの1つです。

まだまだ「ルーチェ」にとってはスタートの段階になりますが、今後もプライベート空間を提供できる「ルーチェ」ならではの価値を追求し、

多くのお客様に愛されるお店を共につくっていけるよう伴走支援していきたいと思っています。

RECOMMEND

関連記事・動画

CATEGORY

TAG

RANKING

  1. 5Aとは?コトラーが提唱するSNS時代のマーケティング手法の特徴を解説
  2. USJから学ぶ「ターゲットを狭く定義しすぎない」理由
  3. ディズニーランドで考える4P分析で本当に大切なこと
  4. ブランディングで大切なこと。差別化から独自性へ
  5. インナーブランディングとは?スタバの事例で学ぶその重要性
  6. ウォルト・ディズニーと「ブランディングの科学」から学ぶターゲットの考え方
  7. 人間中心の体験を設計するサブスクリプションモデル。「経験価値」とは?
  8. 小さな会社が強いブランドをつくる方法。ブランドづくりには順序がある。
  9. 今こそマーケティング3.0。在り方は縦の関係から横のつながりへ
  10. 「独自性」を生む強いブランドづくりはブランド・アイデンティティから

支援サービスのご検討・ご相談はこちら

Zoomでのオンライン相談が可能です
DOWNLOAD

特別eBOOK
ダウンロード

小さな会社のマーケティングを強くするeBOOK。
動画、無料相談、チェックシートの特典付き

MAIL FORM

お問い合わせ

マーケティング伴走支援、研修、コンサルティングの
ご相談はお気軽に

ダビデ・マーケティング株式会社ロゴ
SERVICEサービス CONCEPTコンセプト CASE STUDY事例 SEMINARセミナー COLUMNコラム COMPANY会社概要 eBOOK特別eBOOK CONTACTお問い合わせ